エクセルを使った業務アンケートを行ったので記録
はじめに
今回、社内業務の棚卸をアンケートという形で実施したので、同じ様な作業をする際に参考になるであろう情報を備忘録として残す。
以下の様な作業を行う人には、この内容が参考になれば幸いである。
- 社内業務の棚卸(実態把握)
- エクセルをつかって集計する
- アンケートを効率化したい
アンケート実施の流れ
まず、アンケートを実施する際の流れを大まかに書くと以下となる。
- アンケート設計
- アンケートシート作成
- アンケート実施(展開・回収)
- アンケート集計
- 分析・整理
実際に行なったスケジュールを参考までに
- アンケートの設計(1week)
- アンケートシート作成(2week)
- アンケート実施(展開・回収)(2week)
- アンケート集計(2week)
- 分析・整理(2week)
アンケートの設計は1週間では短かった。2週間は見ておきたい。何のために行うのかという点がぼやけたまま次のアンケートシート作成に移行すると、どのような粒度でアンケート項目を設計すればいいかが判断できず、迷う事となる。結果としてアンケート自体が意味のないものとなる可能性もある。
業務の棚卸など項目数が多く複数人で合意しながら進めるようなアンケートの場合2.5ヶ月以上期間を見た方が無難である。
各フェーズで行うこと
アンケート設計
やること:
・全体間の設計(スケジュール・目的・方法などなど)
・関係者との議論・合意
このフェーズのゴール:
・全体間を設計し、関係者と認識を合わせて合意すること
アンケートを作り始める前に5W1Hの視点で全体感を共有しておくと良いと思う。
・何のために実施するのか(why)
・何のアンケートを行うのか(what)
・アンケート期間はどのくらいか(when)
・誰に対してアンケートを行うのか(who)
・どこで/どの範囲を対象に行うのか(where)
・どうやって実施するのか(how)
まず、アンケートを設計するにあたっては、”why”である目的を明確に意識する必要がある。アンケートの目的としては大きく以下の二つ
⑴仮説の裏付け
・施策に対する意思決定を行うためのバックデータとしての活用。
→例えば、〇〇事業は△△業務に時間がかかっており非効率である。→IT化して効率化すべき。という仮説がある場合に、本当に△△業務に時間が掛かっているのかを検証するために活用する。
⑵新しい気づきを得る
・そもそも実態が把握できていない。
・全く知見のない内容について情報を集めようとしている
→例えば、複数の企業が合併した場合や、外部を活用している場合。どこでどのような業務をしているのか、把握できていない場合が多々あるように思える。(施策を立案したいが、どの業務にメスを入れればいいのか不明。)
⑴の場合は、その仮説だけ検証出来れば良いので、アンケート項目の粒度や内容は自ずとしぼられてくる。検証に関係のない項目は設けるべきでない。回答者の負担を増やし、信頼性を損なうリスクを高める。
⑵の場合、分析内容が明確でないためアンケートの項目設計が悩ましい。期間に猶予があるのであれば、①さっくりと課題を洗い出すアンケートと、②その課題に絞って詳細を把握するアンケートの2段階に分けて出来るのが望ましい。①を全体で行い、②をサンプリングとする、又はその逆にするなど、実施範囲を絞っても良いと思う。
実際は、期間の制約から一回の実施で課題の見える化と施策の裏付けまでをまとめて狙うことがあると思う。(企業であれば、急ぎ利益の目処を立てるためになるべく多くの施策を立案しなければならないなど。)
その場合、結局痒いところには手が届かないふわっとした結果になることは意識しておくべきかと思う。アンケートでは何となくの課題の把握まで。結局は、②を有識者にヒアリングするなどが必要となる。
→業務分解が細かい箇所に課題を見つけた場合、業務あたりの回答のサンプル数が少なく、数字の信憑性が担保できない。ex.ある人は年間10h作業しているが、ある人は年間100h作業している。→サンプル数が少ないのでどの数字を信じれば良いのか判断できない。
→業務分解が粗らい箇所に課題を見つけた場合、内訳がわからず施策に落とし込めない。ex.移動、会議の時間が多いが、何のための移動・会議に時間がかかっているのか分からない。
"what"は、業務の棚卸であれば”業務時間”、定性的に課題をヒアリングするのであれば”課題の自由記述欄” になると思う。
アンケート期間である”when”は、2週間程度見ておけば良い様に思う。ただし、職制を通して展開するなど、アンケートの展開に人を介する場合はそこでの遅延を見込んだ方が良い。
アンケートを展開した後は、こまめに進捗をフォローすることで回収率は高まる。特に社内などの個人が特定出来る対象に対して行う場合は、効果が高いと思う。
アンケート対象”who”については、どの様な分析を行うかを考慮して選ぶ必要がある。業務の中には、一部の人しか関わらない業務がある。例えば、営業業務において顧客からの電話対応に時間をかけていると仮説を立てる場合、実際に顧客と接点を持たない作業者を同じ属性で集計した場合、電話対応にかかる作業時間が全体で薄まってしまい、見えなくなる。
"where"については、例えば、メールで各実施、実施会場を設けるなどが考えられる。各自で実施にするとやらない人が出てくるのである程度の集団で集まって実施してもらう様に事前に検討することで回答率をあげることができると思う。
"how"のアンケート実施方法については、今回の様にエクセルを使うほか、SurveyMonkeyの様なWEB上でアンケートができるサービスなどがある。セキュリティ条件が許されるのであれば、その様なサービスを使う事で作業者の負担はかなり減ると思う。
アンケート作成
やること:
・アンケート項目の作成
・作製したアンケートのプレ実施
・プレ実施した結果を踏まえた修正
このフェーズのゴール:
・フォーマットの作製
アンケートのフォーマットは例えば、以下の様に業務を分解して項目を作ると良いと思う。
業務内容 |
時間 | ||
Lv1 | Lv2 | Lv3 | |
イベント業務 | イベント企画 | 企画書作成 | XXh |
企画予算検討 | XXh | ||
イベント準備 | 会場確保 | XXh | |
景品準備 | XXh | ||
イベント当日 | 会場案内 | XXh | |
受付 | XXh | ||
イベント後対応 | お礼状 | XXh | |
結果集計 | XXh | ||
次回に向けた振り返り | XXh |
注意すべき点は、回答者にフォーマットの入力欄以外をいじられない様にすることである。
手動で集計するのであれば大した問題ではないが、100や1,000人からのアンケートを集計するには集計を自動化する必要がある。
自動化する上では、全員が同じフォーマットであることが必須である。
エクセルは、そのままでは回答者も自由にフォーマットを編集できてしまうため注意が必要である。
編集を制限するエクセルの機能としてシートの保護、ブックの保護がある。
これらは必ず行ったほうが良い。
さらにいうと、パスワードも必ずかけたほうが良い。
(今回、保護をかけたにも関わらず、保護を解除して編集し、回答してくる者が数人いた。もはや嫌がらせである。)
部署名など、固有名詞はプルダウンで選ばせる。誤記や微妙な表現のバラツキを抑えられる。
アンケートのフォーマット作製が一旦完了したら、実際に回答者になる人に対して数人プレ実施することをお勧めする。
項目数が多すぎないか、漏れていたり重複する業務がないか、また俗称などが存在する場合、呼び方が異なることで誤認識しないか。
アンケート実施
特筆することはないが、この期間を使って自動集計プログラム(VBA)を作製することをお勧めする。アンケート実施前に作れると安心だが、実際の業務ではその様な余裕はないであろう。また、フォーマットを展開したことでこれ以上の修正が入らないこともこのタイミングでVBAを組みメリットであると思う。
→自動集計する際のVBAコード参考情報 (今後作成予定)
アンケート集計
やること:
・有効回答と無効回答の仕分け
・集計結果の整理(母数に足していどのくらい集まったのか、そのうち有効回答数はどのくらいか)
・集計結果の共有
このフェーズのゴール:
・集計結果のROWデータ完成
作製したマクロを使って自動集計するだけであるが、
想像以上に苦労するフェーズでもある。
まず、ルールを守らない人が一定数存在する。
・個人を特定する場合、氏名、所属など必須回答にしているにも関わらず空欄で回答してくる
→VBAがエラーになる 場合の対応
→役立ちツール
無効回答と有効回答の仕分け
・どこを境に異常値と判断するか
→仕分けに参考になるVBAコード(今後作成予定)
無効回答に対してやり直させるのか、そのまま除外して進めるのかは、事前に合意しておく方がここで余計な時間を取られずに済むだろう。
集計においては、とりあえず試しに集計してみるという作業が一番の無駄となる。中途半端な集計結果など見せてもなんの判断材料にもならないので、集計するための条件は事前に全て合意して進める方が作業者の負担は減る。
上記でも述べたが、必ずルールを守らない人が存在するのでそれらへの対策は事前に考えておくと作業が止まらずに済む。
<例>
・回答者の情報記入漏れ
→回答フォーマットだけでなく、ファイル名にも書かせる。
→個人名だけでなく、社員番号や所属課など特定できる情報を複数書かせる
(この場合、個人名社員番号などを紐づけたリストを事前に用意しておくと良い)
→救わずに無効票とする。
(これが一番楽)
分析・整理
やること:
・仮説に対する検証結果の提示など 目的毎に整理
このフェーズのゴール:
・得たい結果が得られたら終わり
→分析・整理に役立つエクセル関数(今後作成予定)
まとめ
今回の経験から参考となりそうな情報や、感じたことをまとめた。
これらは、個人の経験から書いたものなので、もっといい方法がたくさんあるであろうし、非効率な部分も多々あると思う。
・アンケート期間は2.5ヶ月ほど見ておく
・アンケート設計時には目的を明確にしておく
・仮説がない場合、1回のアンケートで問題点を特定し、施策まで落とし込むことは難しい。
段階を分ける、有識者にインタビューするなどして仮説を決めて取り組む方が良い。
・エクセルで自動集計する場合は、フォーマットの保護(パスワード設定まで)が必須
・アンケート期間中に自動集計プログラムを作成することで期間短縮
・集計前に無効票の条件を決めておくと集計時に手が止まらない。(イレギュラーケースに対して救うべきか、捨てるべきか迷わずに済む)